"肩甲骨の神話"に囚われず、「胸郭」にも目を向けよう


「肩甲骨の動きを良くするエクササイズ」「肩甲骨はがしの施術」

 

動画サイトやSNSでよく見かけますね。

 

ここ20年くらいを通じて流行しているので「肩甲骨が大事らしい」という説は一般化しています。

ただ、近年のバイオメカニクス(生体力学・人間工学)では、肩甲骨と同じくらい大切だとされる部位があります。

 

それが「胸郭」です。

 

「胸郭」は、首や肩、腰の状態、ひいては全身の運動や姿勢に影響を及ぼす事もあります。

 

今日はそんな胸郭について、できるだけ専門用語を使わずに、3分くらいで分かりやすく解説します!

バズる「肩甲骨」バズらない「胸郭」

胸郭の重要性は、肩甲骨ほど知られていない
胸郭の重要性は、肩甲骨ほど知られていない

肩甲骨という言葉は分かりやすく、興味をひきます。

 

ネットにある情報をワード検索できる昨今、肩甲骨の知名度は「商品」として魅力的。

 

SNSにおいて「#肩甲骨」は強力なタグです。

 

たしかに肩甲骨というパーツは上半身のなかで大きな役割を果たしています。

 

しかし、体の各パーツはお互いに影響しあっています。

 

肩こりなど様々な問題が全て肩甲骨にあるとは限らないのです。

 

近年では、筋肉や骨格の症状を改善するために「身体部位の相互依存性」から物事を考えるのが良いとされます。

 

理学療法やトレーナー、手技療法の世界には既に浸透していますが、一般的には知られていないと思います。

 

これを知っていると、ご自身の「体の地図」を新しいものに書き換えられるでしょう。

 

詳しく知りたい方はコチラの記事をどうぞ。↓

胸郭とは何か?

胸郭がバズらない理由。

 

それは分かりにくさ、です。

 

胸郭というのは次の図の部分です。

胸郭は胸骨・肋骨・背骨(胸椎)で囲われた鳥かご
胸郭は胸骨・肋骨・背骨(胸椎)で囲われた鳥かご

胸郭は、胸骨(ネクタイ状の骨)・肋骨・背骨(胸椎)で囲われた部分です。

 

その下部には横隔膜があり、鳥かごのような形をしています。

 

この胸郭は、本来は柔軟性があり「よく動く」ことが求められます。

 

これは一般の方の直感とは合わないのではないでしょうか?

 

しかし、前述の身体部位の相互依存性のなかでは、胸郭は「よく動くこと」が重要なパーツなのです。

身体部位の相互依存性のなかで、胸郭は動く事が大事なパーツ
身体部位の相互依存性のなかで、胸郭は動く事が大事なパーツ

肩甲骨のお仕事は、胸郭のお仕事の影響を受ける

体のパーツ同士の関わり合いのなかで、肩甲骨が大きく依存している相手がいます。

 

それが胸郭です。

 

胸郭がきちんとお仕事をしないと、肩甲骨が受け持っているお仕事に影響が出ます。

肩甲骨の主なお仕事というのは「安定・支持」です。

 

もちろん適切に'うごく'事も大切なのですが、'安定する'お仕事がないがしろだと困ります。

 

肩甲骨が安定しているから、肩や腕が負担なく、おおきく動かせます。

 

肩甲骨が安定しているから、首を自由に動かせます。

 

上半身を上手に使うためには、肩甲骨が安定してくれなければいけません。

胸郭がしっかり動くことで上半身が正常に機能する
胸郭がしっかり動くことで上半身が正常に機能する

これに対して、胸郭の仕事は「大きく動くこと」です。

 

そして現代人の胸郭は、この仕事をしばしばサボります。

 

今こうしてスマホやPCを見ている間も、あなたの胸郭は動かず固まっていくように。

 

胸郭がきちんと動かないと、そのぶん肩甲骨が安定性の仕事をできなくなります。

 

掃除当番をサボる生徒がいると、そのぶん他の生徒に負担がいくような状態です。

 

このように、肩甲骨のお仕事は、胸郭のお仕事の影響を受けるのです。

胸郭に目を向けて欲しい もう一つの理由

胸郭に目を向けて欲しい理由がもう一つあります。

 

それは胸郭の一番大事な仕事で、生命維持に不可欠なこと。

 

そう、呼吸です。

胸郭のなかの空間が広がる事で、息を吸うことが出来ます。

 

おもに、胸郭の「底」をなしている横隔膜(おうかくまく)が下がる事で、息が吸えます。

息を吸うと横隔膜が下がり、腹圧が上昇する
息を吸うと横隔膜が下がり、腹圧が上昇する

横隔膜は、胸腔(肺などが入っている空間)と腹腔(お腹の中の空間)を隔てる幕です。

 

横隔膜が下がると、胸腔が広がり、腹腔は狭くなります。

 

お腹の中が狭くなることで内部の圧力が高まります。

 

お腹の中のしぼんた水風船が押しつぶされてパンパンになるようなイメージをしてください。

お腹の中の圧力を「腹圧」といいます。

 

腹圧が上がると、体幹が安定します。

 

腹圧の上昇と体幹の安定は、姿勢を維持したり、動作を行ううえで非常に重要です。

たとえば慢性的な腰痛の人では、腹圧を高めて腰椎(腰の骨)にかかる負担を減らすことが大切になります。

 

また、スポーツ選手のトレーニングでも体幹の安定性は非常に重要ですよね。

 

胸郭の柔軟性と体幹の安定性はお互いに依存しあっている
胸郭の柔軟性と体幹の安定性はお互いに依存しあっている

このように「呼吸」「姿勢」「動作」はお互いに強く影響しあっています。

 

それゆえに、これらを司る横隔膜のうごきは非常に重要です。

 

横隔膜のうごきは、胸郭がかたまっていると上手く作動しません。

 

姿勢や動作をよくするための呼吸には、胸郭の柔軟性が必要なのです。

 

まとめ

今日は、胸郭の重要性についてお話ししてきました。

 

一般の方にも分かるように解説をしてみたつもりです。

 

そのため、学術的な正確性を考えるとグレーな部分もあると思います。

 

記事の目的は「あまり知られていない胸郭の重要性」を一般の方に知ってもらう事だと思って読んでください。

 

いつの日かSNSで「#肩甲骨」と同じくらい「#胸郭」がみられると良いと思います。

 

肩甲骨が重要でないという話ではないので、その点も何卒ご了承ください。

 

それでは、また別の記事でお会いしましょう。

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この記事を書いたのは…

田中陽祐(たなかようすけ)

 

柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。

包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。



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