今回の記事は、成長期後期(高校生)の運動発達とスポーツについてです。
シリーズの5回目になります。
前回までの記事はこちらからご覧くださいませ。
身体的成熟と専門的性の高いトレーニング
高校生期には、さまざまな身体要素が成人と同じレベルに達します。
すでにおなじみになっている下記の二つの図からも分かると思います。
この年代においては、発育や発達に合わせた身体能力向上よりも、競技特性に合わせたトレーニングになります。
その競技には、どんな体力特性が求められるかを考えて突き詰めるという事です。
体力特性とは、たとえば次のような事です。
- 力の発揮のしかた
- 持久力のあり方
- どんな身体操作が求められるか
- どんな可動性が必要か
より競技特化したトレーニング
力の発揮に関するトレーニングでは、おおきい力発揮が優先なのか、素早い力の立ち上がりが必要なのか考えながら行います。
ラグビーのフォワード選手などは、大きい力を発揮するトレーニングが求められるでしょう。
同時に力を早く立ち上げるトレーニングも補助的に行う必要があります。
逆に卓球などでは、おおきい力を発揮するより素早く力を立ち上げる事が求められます。
素早い力発揮のトレーニングの中で筋力も向上していく事になるでしょう。
持久力においても、マラソン選手とラグビー選手では持久力の質は違います。
マラソンでは「有酸素系」というエネルギーの供給形態がはたらくので、これを強化します。
対して、ラグビーなどの球技では「ATP-CP系」「解糖系」がはたらきます。
この場合、全力で運動したあと次に全力で動くまでのリカバリー能力を高める必要があります。
インターバルを挟んだ全力ダッシュをトレーニングに取り入れます。
ダッシュの距離も競技に合わせて変わるでしょう。
身体操作については、運動方向の違いなどがあります。
100m走のような直線的動作の競技もあれば、バドミントンのように多方向で多面的な動きを求められる競技もあります。
短距離走のように直線的なドリルを行う競技もあれば、様々な球技では多方向へのアジリティドリルを行います。
可動性もまた重要な体力要素ですが、競技ごとに求められ方が違います。
新体操の選手は非常に高い柔軟性を求められます。
しかし、ラグビー選手に新体操レベルの柔軟性は必要なく、かえって負傷に繋がるでしょう。
児童期や成長期前期には、総合的な身体発達を優先していました。
これに対して成長期後期はより専門的で、個別的なトレニンーグを行います。
私達トレーナーは成長期後期に専門的なトレーニングが行えるよう逆算して、低年齢の選手に接する必要があります。
成長期中期までは、身体能力の伸びしろを充分に引き出してあげる事が重要なんですね。
パーソナルなトレーニング設計
トレーナーは、その選手が求めている/求められている事を理解する必要があります。
理想的なパフォーマンスを発揮してもらうためです。
ただ、パフォーマンス向上を目指す中で、ケガや障害を引き起こさないように注意しなくていけません。
そのために知らなくてはいけない事も幾つかありいます。
たとえば既往歴。
過去のケガは、将来起こりうる負傷の一番のリスクになります。
また、選手がトレーニングに適応できるだけの経験値があるか知る必要があります。
これは「トレーニング年齢」という概念で言い換えられます。
競技に必要だからと言って、トレーニング年齢が低い選手に、複雑で難易度の高いトレーニングを課すことは出来ません。
充分に実行できるレベルの運動から段階的に実施する事こそ「パーソナル」であるといえます。
まとめ
いかがでしたか?
成長期後期(高校生)では、成人アスリートに近い身体機能を有している状態です。
その一方で「トレーニング年齢」はまだ低い事から、段階的で発展的なトレーニングを行うことが重要です。
また、成長期中期までよりも競技に特化した身体強化を行う事も出来るでしょう。
逆に言えば、低年齢の選手には、この段階を見据えた総合的な身体能力の引き出しを行っておく事が大切です。
5回にわたるシリーズでしたが、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!
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この記事を書いたのは…
田中陽祐(たなかようすけ)
柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。
包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。
参考にした書籍はこちら↓
- アスレティック・ムーブメント・スキル −スポーツパフォーマンスのためのトレーニング/Clive Brewer (著), 広瀬 統一 (翻訳), 岡本 香織 (翻訳), 干場 拓真 (翻訳), 福田 崇 (翻訳), 吉田 早織 (翻訳)
- ムーブメントーファンクショナルムーブメントシステム:動作のスクリーニング,アセスメント,修正ストラテジー/Gray Cook (著), 中丸宏二 (翻訳), 小山貴之 (翻訳), 相澤純也 (翻訳), 新田 收 (翻訳)
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