肩の腱板損傷について【やさしい解説】


腱板損傷という言葉をご存知ですか?

 

自分や親しい知人がなった時にこの傷病について知る人が多いと思います。

 

よくあるケガ・障害ですが、それがどんな状態なのか一般の方には分かりにくいかもしれません。

 

それは肩の関節のつくりや、周囲の筋肉・腱の付き方が複雑だからです。

今日はそんな肩関節の腱板損傷について分かりやすく解説していきます。

 

出来るだけ専門用語を使わずに解説していますので、どうぞ最後までついてきてくださいね。

肩の腱板とは何か?

肩関節の腱版の図
肩関節の腱版の図
腱板を構成する筋肉
腱板を構成する筋肉

肩の関節には「腱板」というものがあります。

 

これは、いくつかの筋肉がまとまって腱となり、腕の骨(上腕骨)に付着する部分です。

 

それぞれ①棘上筋②棘下筋③小円筋④肩甲下筋といい、共同で肩関節の「動きの調整役」をしています。

腱板損傷では、どんな状態になるか?

腱板損傷では、①棘上筋の腱の部分を損傷することが多いです。

 

下図の赤丸の位置、棘上筋の腱が上腕骨に付着する部分の1cm上のところです。

 

腱板損傷における損傷個所は大抵ここになるので「クリティカル・ゾーン」と呼んだりします。

棘上筋腱の損傷しやすい部分
棘上筋腱の損傷しやすい部分

なぜここを損傷するかと言うと、この部分は2つの骨のあいだに挟まれやすいからです。

 

2つの骨とは、腕の骨(上腕骨)と肩甲骨の突出部分(肩峰)です。

 

どういう風に損傷が起こるかというと…

  1. ころんだ際に手を衝き、突き上げられた上腕骨と肩峰のあいだに腱が挟まれる。
  2. 腕をあげるスポーツ動作や仕事によって繰り返し腱がはさまり、擦り切れる。
  3. 加齢によって腱が硬くなっていて、腕をつかう日常動作のくり返しで擦り切れる。
腱板は物理的に負荷がかかりやすいところにある
腱板は物理的に負荷がかかりやすいところにある

1番に関しては、突発的に起きるケガです。

 

スポーツで転倒して手や肘をついて発生した例では、競技復帰までに数週間~数カ月かかります。

 

 

転倒のリスクが高い高齢者の方では、日常生活で発生する事もあります。

2.3番については、くり返し腱が挟まれることで徐々に擦り切れていくものです。

 

通常の状態では、骨のあいだに腱板が挟まれる事はありません。

 

しかし人間でも、機械で言うところの動作エラーが生じている事があります。

 

肩関節の動作に「不調和」が生じていると、腕をあげる時に腱が挟まれることが起こります。

 

このあたりは、別の記事で解説しますので、もしよろしければご覧ください。

3番にあるように、加齢により肩の腱が硬くなっていると、肩の動きが悪くなり、腱板も擦り切れやすくなります。

 

60代くらい年齢層では、無症状のまま(痛みや不具合なく)腱が断裂している事も少なくありません。

 

長年腕をあげる仕事をしてきた人などに多いようです。

 

また、長時間のデスクワークや運動不足などで、普段からあまり肩を動かさない人も腱が硬くなりがちです。

腱板損傷の症状

転倒などで突発的におきた腱板損傷では、肩の関節部分に強い痛みが生じます。

 

腕をあげる際にたいへん痛み、手を上げるのが困難な事もあります。

 

腕自体の重みが長時間かかっていると痛むので、反対の手で腕を支えたくなるでしょう。

 

しばらくは腕を上げて服を着るのが困難なので、前開きの衣服を用意した方が良いかもしれません。

また腱板損傷の痛みは、夜になって寝ようとする時に強く感じるのが特徴です。

 

これを「夜間痛」といいます。

 

負傷したあと1日~数日は夜間痛がつよく、睡眠をとるのが困難な事もあるようです。

 

これに対する対処法は後の項目で解説していきます。

腱板損傷のテストと検査

棘上筋の腱が全域にわたって切れているものを完全断裂、部分的に切れているものを部分断裂と言います。

 

腱板がどのくらい切れているかは、MRIによって診断されます。

 

また、最近ではエコー(超音波画像装置)による検査も行われます。

腱板損傷時、腕を横にあげると60°~120°で痛みが生じることを「ペインフルアークサイン」という
腱板損傷時、腕を横にあげると60°~120°で痛みが生じることを「ペインフルアークサイン」という

また、画像装置を使わない徒手的な検査法もあります。

 

肩のケガには様々なものがあり、その中でもどの組織を損傷しているか「あたりをつける」時に重宝します。

 

腱板損傷のテスト法は「ペインフルアークテスト」といいます。

 

腕を横にあげていくと60°~120°のあいだで強い痛みを感じ、検査者の指に腱が擦れる「雑音」を触れることもあります。

また、先述の「クリティカル・ゾーン」にピンポイントで強い圧痛(あっつう:押すと痛いこと)があります。

 

この圧痛も損傷個所を特定するのにたいへん有用です。

どんな治療を行うか

治療の方針には、保存療法と手術療法があります。

 

基本的に、まずは保存療法が選択されるようです。

 

保存療法を続けても痛みや動作不良が残る場合や、高いレベルのスポーツ動作が要求される人は手術が選択されます。

保存療法では、装具や三角巾・包帯などで出来るだけ肩関節の安定を保ちます。

 

また、病院では痛み止めの処方も受けられるでしょう。

 

接骨院で患者さんを診ていると「夜間痛が辛い」という訴えが多く、負傷初期の治療テーマになる事が多いです。

 

就寝時は、完全に仰向けになるよりも、起き上がった姿勢が楽です。

 

リクライニング状態で寝たり、ベッドの背板に体をもたれて寝ると良いでしょう。

腱板損傷の直後は、体を起こして寝る方が楽な場合が多い
腱板損傷の直後は、体を起こして寝る方が楽な場合が多い

腱板損傷で知って頂きたい事が2つあります。それは…

 1つ目は、損傷した腱板はほぼ「自然にはくっつかない」という事です。

 

腱板は血行が乏しいためと言われています。

 

くっつけるためには、手術で損傷個所を縫合したり、完全断裂ならボルトで腱を固定する術式が選択されるようです。

2つ目は、腱板が切れていても支障なく日常生活を送っている人もいること。

 

先述の「知らぬ間に腱板が切れていた」人たちは「無症候性腱板断裂」といわれます。

 

医療的な統計によると、このような状態は70代以降の男性の約半数に起きていると言われます。

再負傷や慢性的な痛みを予防するには

損傷した腱が自然にくっつかないため、再負傷によって断裂部分が拡がらないよう注意しましょう。

 

手術で腱をくっつけた後にも、肩の使い方を見直すことは大事です。

 

 オーバーヘッド動作(腕をあげる動き)を繰り返すスポーツの選手は特に注意します。

 

 

医療的なリハビリから競技トレーニングまで、繋ぎ目なく連続した復帰プログラムが理想です。

 

医療者・トレーナー・競技コーチが連携できる環境構築ができると良いと私は思います。

スポーツをしない一般の方でも、再負傷や無症候性断裂に繋がらないよう注意が必要です。

 

肩の関節が正しいメカニズムで動くように、まめなコンディショニングをしましょう。

 

肩の動作メカニズムや、コンディショニングについての記事はこちら。↓

まとめ

いかがでしたか?

 

体のメカニズムから見て、腱板損傷はおこりやすい傷病と言えます。

 

そのため、再負傷にも十分注意する必要があります。

 

自己判断で治療やリハビリを切り上げる事はせず、その後もセルフケアを行うようにしましょう。

 

適切な治療をうけて早く良く成って頂くことをお祈りしています。

腱板損傷では、自己判断せず適切な治療を受けることが大切
腱板損傷では、自己判断せず適切な治療を受けることが大切

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この記事を書いたのは…

田中陽祐(たなかようすけ)

 

柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。

包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。



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