ハムストリング(もも裏)の肉ばなれについて分かりやすく解説


肉ばなれは、スポーツではよくあるケガで、発生率が高いです。

特に発生しやすいのがハムストリング(もも裏)で、肉ばなれ全体の30%を占めるという報告もあります。

ハムストリングの肉ばなれはスポーツでは良く起こるケガ
ハムストリングの肉ばなれはスポーツでは良く起こるケガ

この記事にたどり着いた方は、実際に負傷されて困っている方でしょうか?

 

今日は、トレーナー・医療従事者として、ハムストリングの肉ばなれについて分かりやすく解説します。

 

学生アスリートや保護者の方にとって、実際に役立つ情報になるようにします。

 

最後までついてきてくださいね。

ハムストリングはどこにある?

ハムストリングというのは、ももの裏側の筋肉です。

 

3つの筋肉を合わせてハムストリングと言います。

 

ももの外側から内側に向かって、①大腿二頭筋 ②半腱様筋 ③半膜様筋です。

ハムストリングはももの裏の3つの筋肉を合わせた名前
ハムストリングはももの裏の3つの筋肉を合わせた名前

股関節や膝関節の動きに関与しています。

 

スポーツでは、走る時やジャンプの時、急停止する時に大きな力を発揮します。

ハムストリングの肉ばなれの原理

肉ばなれは、筋肉に強い「引き伸ばしの力」が加わって発生します。

 

この力を「伸張力」といいます。

ハムストリングに強い伸張力が加わるのは、ダッシュやジャンプの動作時です。

 

特にトップスピードで走る時、急な減速時、跳びあがる際や着地のタイミングで大きな負担がかかります。

ハムストリングの肉ばなれは、ダッシュやジャンプの際に起こりやすい
ハムストリングの肉ばなれは、ダッシュやジャンプの際に起こりやすい

何故これらの動作の時に負担がかかるのか?

 

それは、筋肉の長さが縮みながら、同時に強い伸張力もかかるからです。

 

縮もうとしているところに伸張力が加わるので、時として許容範囲を超えた外力が発生するのです。

肉ばなれの初期処置でいちばん大切なこと

ハムストリングの肉ばなれは、突発的に起こる場合と、だんだん肉ばなれ状態に至る場合があります。

 

例えになりますが、ロープなど繊維状のものが切れるのを想像してみましょう。

ロープが徐々に傷むように、だんだん肉ばなれに至る事もある
ロープが徐々に傷むように、だんだん肉ばなれに至る事もある

一発の外力でバツンと切れる場合もあれば、微細な損傷が徐々に広がり、だんだん切れていく事もあります。

 

それと同じように、肉ばなれにも色々な発生の仕方や段階があります。

走っていて瞬間的に強い痛みが走る事もあれば、発症時の感覚が違和感くらいのこともあります。

 

ただ、どんな発祥の仕方でも負傷初期の段階でプレーをストップする事が大切です

 

先ほどのロープの例え話のように、軽い損傷だった筋肉が突然つよく断裂する事もあるのです。

肉ばなれが考えられる場合、まず第一にプレーからいったん離脱して、患部を安静に保ちましょう。

肉ばなれの治療

負傷初期にアイシングをする事は、治療上とても有効です。

 

もしアイシングの知識があるようでしたら、スポーツ現場でも自己処置として行うと良いです。

 

アイシングのやり方は、真剣にスポーツを続けていく選手には学んでおいて欲しいと私は思います。

肉ばなれの初期にアイシングを行うと痛みの緩和に効果がある
肉ばなれの初期にアイシングを行うと痛みの緩和に効果がある

また、ももの肉ばなれにおいては、患部を軽くコンプレッション(圧迫)しておくと痛みが軽減しやすいです。

患部を安静にする意味も含めて、太ももから膝にかけて弾性包帯を巻く事もあります。

 

弾性包帯は、一般の方でも巻きやすいように思えますが、むしろ非伸縮性の綿包帯よりも注意が必要です。


伸縮性がある分、締め付けすぎてしまう事が多く、血行不良を起こします。

 

応急処置として使用する場合には、じゅうぶんに注意してください。

肉ばなれの際には、伸縮性包帯で軽度圧迫すると痛みが軽減する事がある
肉ばなれの際には、伸縮性包帯で軽度圧迫すると痛みが軽減する事がある

また、ハムストリングの肉ばなれは、回復期のストレッチや運動療法が大変重要です。

復帰後も患部の違和感が残ったり、復帰直後がいちばん再負傷のリスクが高いためです。

軽度の損傷であれば、負傷後1週間くらいから軽い運動療法やストレッチを始めます。

 

完全断裂のような重症例では、もっと時間がかかりますが、かならず十分な運動療法を行います。

肉ばなれの後は、全身動作を見直すリコンディションが大切
肉ばなれの後は、全身動作を見直すリコンディションが大切

ハムストリングは、スポーツ復帰直後の再負傷が多いケガです。

 

また、違和感や柔軟性の低下も残りやすいです。

 

症状が残ったり、再負傷をしない事が、治療上大きな目標になります。

 

そのため、医学的な「運動療法」から、スポーツとしての「リコンディショニング」へつなぎ目なく移行する事が重要です。

スポーツへの復帰は?

負傷後スポーツ復帰までに必要な日数は、ハムストリングがどのくらい傷ついているかによります。

 

肉ばなれには、次のような損傷の程度による分類があります。

  • Ⅰ度:筋肉に微細な損傷がある。内出血は現れない。完全に治るまで2~3週間。
  • Ⅱ度:筋肉組織が部分的に断裂し、軽く出血が現れる。完全に治るまでに4~5週間
  • Ⅲ度:筋肉の完全断裂。内出血がつよく出現。完全に治るまで8~12週間

スポーツにどうやって復帰していくかは、ケース・バイ・ケースです。

 

ケガの大小にかかわらず、選手一人ひとりと向き合うことが大切です。

 

競技環境、競技レベルがどの段階にあるか、大会の日程なども良く把握しなくてはいけません。

 

接骨院では、そういった事を選手と綿密に打ち合わせる事が大事な仕事になってきます。

ただ、ひとつ言えるのは、完全に治るまで全く運動をせずに、治ったから100%でやりましょう、という事ではないです。

 

段階的に復帰していく事が大切です。

肉ばなれをしているハムストリングに負担がかけられない時も、患部を使わない運動は可能です。

 

治療を受けている医療機関に、どんな運動が出来るか聞いてみると良いでしょう。

たとえば、以前こんな記事も書いたことがあります。

 

これは突発的な外傷とは違いますが、復帰プログラムの参考になると思うので、ご覧いただければ幸いです。

ハムストリング肉ばなれの運動療法

運動療法や復帰前のトレーニングに使えるエクササイズを少しだけ紹介しましょう。

 

でも、その前にとても大切なことがあります。

それは、ハムストリング以外のコンディションを先に整えておくことです。

ハムストリングの肉ばなれをする選手は、全身の状態が悪い事がほとんどです。

 

全身の可動性が低下し、体幹は過剰に緊張して、コアの安定性が異常をきたしています。

ハムストリングの運動療法を開始する前に、他の全身的な問題に取り組んでおきましょう。

 

負傷直後から、ケガをしたハムストリング以外のストレッチを開始する事が大事です。

 

そのうえで、ハムストリングの運動療法として、次のような運動療法をお勧めします。

まず最初は、負荷をかけない状態でレッグカールをやってみましょう。

 

下の動画のようにマシンを使うのではなく、マットにうつ伏せになって、負荷無しで膝の曲げ伸ばしを行います。

 

片脚ずつ曲げ伸ばしする方が良いです。


完全断裂など、重度の損傷の時はトレーナーやリハビリスタッフが手を添えて行う時もあります。

 

こういう運動を専門用語で「自動運動」とか「自動介助運動」と言います。

マシン・レッグカール
マシン・レッグカール

上の動画のような静的ストレッチは痛みが十分やわらいでから行います。

 

このような前屈ストレッチも良いですが、自分の体重が傷めたハムストリングに掛かり、筋肉が強く伸ばされます。

わたしは、初期のストレッチには下の動画のような「ストラップ・ストレッチ」をオススメしています。

デッドリフトは、ハムストリングを遠心性収縮(伸ばしながら力を発揮)させるエクササイズです。

 

十分治ってきた段階で、競技復帰前に取り組むと良いでしょう。

 

股関節と体幹を使う意識が身につくため、ケガをする前よりもスポーツ動作が向上します。

静止画のように、片足でデッドリフトを行えることは、アスリートにとってとても重要です。

 

肉ばなれをきっかけに、基本的な動作トレーニングに出会うことは、その後の競技力向上に繋がります。

 

ケガをした時には、医療的なリハビリだけでなく、トレーナーの力も借りるようにしてみてください。

デッドリフトは運動療法にもリコンディションにも有効
デッドリフトは運動療法にもリコンディションにも有効
片脚でのデッドリフト
片脚でのデッドリフト

再発予防のために、ランニング動作やアジリティ、フットワークを見直すことも大事です。

次のような記事もありますので、是非参考にしてみてください。

まとめ

いかがでしたか?

 

ハムストリングの肉ばなれは、非常に発生率の高いケガです。

 

競技復帰直後におなじ部分を再負傷する事もあり、計画的な治療・コンディション改善・復帰が必要です。

一方で、選手自身がコンディション不良に気付き、コンディション調整の大切さを知るきっかけにもなります

 

もし今、あなたがこのケガで練習や試合に参加できていないとしたら…

 

その時間も無駄ではなく、意味があるものにした方が良いです。

ケガをした時の過ごし方で、競技力はが落ちる事も高まる事もあります

 

こちらの記事でも、ケガの間の過ごし方について紹介しているので、もしよかったら見てみてください。

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この記事を書いたのは…

田中陽祐(たなかようすけ)

 

柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。

包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。



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