スポーツで指を脱臼した時は【わかりやすい解説】


スポーツのケガを、選手と保護者さん目線で分かりやすく解説するブログ。

 

今日は「指の脱臼」についてです。

突き指で発生する事が多く、球技・格闘技・コンタクトスポーツでよくみられます。

 

週末や夜間など、病院がやっていない時に発生する事もしばしばです。

「脱臼」は誤解している人が多いケガです。

 

間違った知識で処置すると、整復(元に戻すこと)が出来ない状態になる事があります。

 

きちんと治療しないと、それ以降も再脱臼を繰り返すことがあります。

今その場で脱臼を何とかしようとしている貴方。

 

一旦ちょっと待って、まずこの記事を読んでください。

 

3分くらいの簡単な記事です。

指の関節の名前

まず念のため、指の関節の名前をお教えします。

 

治療する側からすると、どの関節かで対処のレベルが違うからです。

 

電話などでも、ちゃんと伝えられるようにしましょう。

指の関節の名前
指の関節の名前

↑クリックで拡大できます。

 

親指以外の4本指は、関節が3つあります。DIP・PIP・MP関節です。

 

親指は2つ。MP関節とIP関節です。

 

「この関節が脱臼したら手術しないと整復がほぼ不可能」という関節もあります。

 

どの関節が脱臼しているのか把握しましょう。

指を引っ張るのはNG

たまに指の脱臼を見るなり引っ張って治そうとする人がいますが、やめた方が良いです

 

なぜかというと…

  1. 整復操作によって周囲の靭帯を傷める可能性がある。
  2. 引っ張るとロッキングしてしまう種類の脱臼もある。
    関節部分に軟骨などがはまり込み、徒手では戻せなくなります。
  3. 骨折を併発している例では、整復してもまたすぐ脱臼してしまう。

 脱臼にも種類がたくさんあり、整復する(正常な関節位置に戻す)にあたっては細心の注意が必要です。

 

 

専門家は問診や検査をきちんと行います。

 

そのうえで、徒手での(手術を伴わない)整復が可能かどうかも考慮します

「脱臼骨折」の場合もある

脱臼をした時に、周辺の骨に骨折がおこっている可能性があります。

 

たとえば、PIP関節の脱臼の際は、赤い点線部に小さい骨折が発生する事があります(クリックで拡大できます)。

PIP関節は脱臼骨折が起こりやすい
PIP関節は脱臼骨折が起こりやすい

この赤い点線の部分の骨が折れると、関節が不安定になるのが想像できますか?

 

骨折部分の整復をしたり、適切な固定をしないと簡単に再脱臼してしまいます。

 

「何か変だぞ?」と思ったらすぐに医療機関を受診しましょう。

脱臼を整復できる医療機関へ

前述のように、整復に失敗すると「ロッキング状態」になる脱臼があります。

 

そうなると徒手での整復が不能になるので、自分での整復は避け、医療機関を探しましょう

病院であれば「整形外科」の診療科目がある医院が良いです。

 

日曜・祝日で近くの医院がお休みなら、お住まいの地区の「休日当番医」を検索するのも良いでしょう。

救急外来にかかる場合、整形外科担当もしくは脱臼を整復できる先生が診察中か問い合わせましょう。

 

整形外科専門の先生がいない時、別の先生が対応してくれるかどうかは病院によって違うようです。

わたしたち接骨院も脱臼の処置が可能です。

 

病院より受付時間が長いことが多いので、お役に立てる事もけっこうあります。

 

ただ、徒手で整復できない(手術でなければ治らない)脱臼があり、それには対処できません。

 

なので電話での問い合わせでは、一枚目の画像のどの関節なのかが知りたいのです。

専門家でも無理な整復操作はしない

脱臼は基本的に早期に整復した方が良いです。

 

ただ、無理やりな整復操作は負傷者に苦痛を与えます。

整復は愛護的に行われるべき
整復は愛護的に行われるべき

また、くり返し整復操作を行う事は苦痛なばかりでなく、状態を悪化させます。

 

1度の操作で整復できない場合、徒手での整復にこだわらない事が大事だと思います。

もし負傷者自身や周囲の人が無理に整復しようとしていたら止めてあげてください。

関節が入れば万事解決ではない

脱臼後、数週間は再脱臼する可能性があります。

 

また、負傷時にまわりの靭帯をいっしょに傷つけている事も多いです。

なので、患部の安静を保つために固定を施す必要があります。

 

指の肢位(曲がり具合)を考慮し、適切な固定をする事が必要です。

たとえ自分で整復できたとしても、そのあと医療機関を受診する事をおすすめします。

まとめ

いかがだったでしょうか?

 

脱臼にはいろいろな種類があります。

 

その中で、徒手で整復できないものや、引っ張るとロッキングしたり悪化するものもあります。

 

無理になんとかせず、慌てずに慎重な行動をとっていただくようお願いします。

この記事でお役に立つ情報が得られていれば幸いです。

 

他にもいろんな記事があるので、お気に召しましたら時間のある時にご覧くださいませ。

この記事を書いたのは…

田中陽祐(たなかようすけ)

 

柔道整復師・スポーツトレーナー。にいさと接骨院×からだラボ 院長。

包帯やテーピングを巻くのが大好き。趣味はランニング、山登り。


参考にした書籍はこちら↓

  • 柔道整復学・理論編(改訂第7版)  
    公益社団法人全国柔道整復学校協会 (監修), 公益社団法人全国柔道整復学校協会・教育支援委員会教科書部会 (編集)
  • 実践にもとづく骨折・脱臼の保存療法 
    竹内義享 (著), 堺研二 (著), 西川順三 (著)
  • カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫―画像診断の進め方と整復・固定のコツ (ビジュアル基本手技 2)
    内田 淳正 (著)

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